参加者は、去る6月13日に実施した特別講義を聴講した生徒の中で、
特に参加を希望した10名と関係者を含めた約20名。
「農業法人への就職」を将来の選択肢のひとつとして踏まえ
職場環境や栽培への拘り等を、直に感じ取って欲しいという思いから企画しました。
7月12日(金)8:00に大分駅から出発し、中部地区~東部地区~豊肥地区を1台のバスで巡りました。
1社目【大分ほっぺリーフ株式会社】
約2haの32連棟ハウスで、主にベビーリーフの栽培を行っています。
ハウスの中に入ると、外からは想像できないほどの広さ!
ベビーリーフが遠くまで広がり、さながらグリーンの絨毯のよう。
葉っぱの状態が悪くならないように全て手狩りで、朝5時から収穫、もっと気温が上昇してくると
ライトを点けて3時から収穫しているそうです。
有機肥料として、タンパク質を多く含んだフェザーミールや鳥の血粉を使用しているそうですが
どういった肥料で植物を育てるかによって、出来上がってくる味の傾向も違ってくるとのこと。
彩りとして使い切りたい、サラダとしてたくさん食べたい、などニーズを意識したサイズ展開に加えて
加熱せずに食べられる春菊や「新・春の七草」など、消費者の購買意欲が湧くような付加価値を
付けることによって、同業他社との差別化を図っています。
2社目【くにみ農産加工株式会社】
キユーピーのパスタソースや、セブンイレブンのポテトサラダの原料となるバジルを主力商品として
栽培は契約した農家さんに委託しています。
良い商品は良い原料からしか出来ないという方針の元、クオリティを一定の基準以上に保つという
共通認識を図りながら、時間や生産物にロスが出ないように取り組んでいます。
第2回パートナーシップ構築大賞 中小企業特別賞を受賞したクラウドシステムの
『KUNIMIX CLOUD』は「いつ誰が苗を植えて、どんな肥料や農薬を施し、いつ収穫出来そうか」
といった生産履歴の把握や追跡が可能です。
このシステムにより、優秀な栽培方法のデータ分析を行い、情報共有することで
バジル生産農家のレベルアップにつながり、地域全体で高い生産性を実現することが可能となりました。
地域と共にかけがえの無い存在になろうという理念の元、
安心してこの仕事を続けて行ける環境を提供していきたいと語っていました。
3社目【シセイ・アグリ株式会社】
幕末の指導者として有名な吉田松陰の「至誠にして動かざるものは、未だこれ有らざるなり」
(精一杯の誠意で相手に接すれば、それで心を動かされない人はいない。すなわち人を動かそうと思ったら、真心を持って接するべし)
という格言から社名を掲げた同社。
約12ha強の耕作面積で白ネギを栽培しています。
どの農業者も「より美味しいものを」作るため、日々生産に励みますが、同社では、その「美味しい」を客観的に示し
説得力を得るために定期的に食味分析に出して、美味しいを数値化する取り組みを実施しているとの事。
独自ブランド「おもしろいねぎ」として出荷しています。
圃場紹介等も行いましたが、参加者が高校生ということから、代表の勲氏から、農業業界の現状
そしてポテンシャルについて話がありました。
「農業の担い手は減少傾向。だからこそ、我々のような農業法人が経営拡大を成す機会でもある。
そのためには人づくりこそ重要である。」という話が印象的でした。
同社では、キャリアステップを定め、従業員の希望する働き方に沿った仕事内容や責任を与えることで、
各人にとって納得感のある働き方を整えようと努めていました。
一方、仕事は与えられるのを待つのではなく、自ら作り出せる能動性を持つ従業員が伸びると話し、
参加した学生にも今の内に熱中できることを見つけ、率先して取り組む経験を積んでほしいと語りました。
調整場で音楽が流れていたのですが、その音楽はその日の当番が選曲して流しているとのこと。
黙々と作業しがちな調整場で好きな音楽を流せると能率もいいですし、雰囲気も良かったので、いい取り組みだなと感じました。
4社目【株式会社グリーンマム農園】
経営者の二人は県庁退職後に就農を目指して、(有)お花屋さんぶんご清川で研修生となり
2020年に独立しました。
オランダ式フェンロ―ハウスの中に入ると、手前に有るものは、丈もまだ低く茎と葉だけの状態で
まるで葉物野菜かと見間違うほどでしたが、奥に進んで行くと、90㎝ほどに成長し蕾が開きかけた
可憐な菊が有りました。
夜、電気が点いている間はひたすら伸び続ける為、収穫したい時期を逆算し膝丈ほどに成長したところで
電気を点けるのを止めると開花するそうです。
人為的にコントロールすることで、1年間通しての栽培出荷が可能となっています。
黄色やピンクの菊も見られましたが、やはり白の需要が多いとのこと。
長さに関しても、90㎝が一番良いとの固定観念が有り、市場の価値観を変えるのは
なかなか難しい話のようでした。(ゴミになるのに…。)
会社のモットーは『早く帰ろう』
極力機械化、完全週休2日制、定時で退社出来るような職場を目指しています、とのことでした。
この日は8時から18時まで、バスでの長距離移動は疲れも伴ったと思います。
各農場で、学生の皆さんの様子を伺っていましたが
手に持ったノートのページは小さな文字で埋め尽くされ、熱心にメモを取る姿が見受けられました。
そんな勉強熱心な一面とは打って変わって
法人の代表が「何か聞きたいことは無いですか。」「どんなことでも良いですよ。」と
声を掛けるも、気恥ずかしさも有るのか、なかなか発言が出てこない場面も…。
応援する気持ちで見守っていましたが、同行の教員のフォローによって
学生からは様々な質問が挙がりました。
各法人の代表からは農業の技術的なことは勿論のこと、人生の先輩としてのアドバイスも頂きました。
1日掛けて4法人を廻り、生産者の思いや経営論を聞くことは、学校では経験出来ない貴重な時間だったと思います。
9月17日(月)にはレゾナック武道館にて、県内農林水産系の学生に向けて合同相談会が開催されます。
出展企業ごとブースに分かれているので、恥ずかしさも軽減されるのではないでしょうか。
是非、積極的に発言して、将来の進路について検討する1日になってくれることを願います。